第20章
AIエージェント開発のプロンプト・設定ファイル チートシート
約11分
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最後の章は、引くための章です。読み物ではなく、作業中に開く前提でまとめています。
指示の型
本書で扱った「効く指示」を、そのまま使える形にしました。
検証まで一続きにする
[やること]を実装して。
期待する挙動は次のとおり: [具体例を列挙]
実装後にテストを実行して、通るまで直して。
症状を抑えるのではなく、原因を直して。
ポイント — 「実装して」で止めない。確認と修正まで1つの指示に含めると、自走する範囲が広がります。→ 14章
作らせる前に計画させる
[やりたいこと]をしたい。
まず既存の実装を調べて、どう進めるか計画を出して。
実装はまだしないで。
計画を確認してから実行に移します。手順が読める作業はワークフローに寄せ、読めない部分だけをエージェントの裁量に残すのが基本です。→ 12章
タスクを検証可能な単位に切る
| 弱い切り方 | 強い切り方 |
|---|---|
| 認証機能を実装して | 正しい認証情報で200が返るテストを通して |
| パフォーマンスを改善して | 一覧取得のクエリ発行数を2回に減らして |
| バグを直して | この再現テストが失敗している。通るようにして |
終わったかどうかを機械が判定できるかが唯一の基準です。→ 12章
調べさせる(コンテキストを汚さない)
サブエージェントを使って[調べたいこと]を調査して。
結果の要約だけを返して。
大量のファイルを読む作業は、別のコンテキストに逃がします。→ 9章
レビューさせる
サブエージェントで [対象] の差分をレビューして。
正しさと要件に関わる欠落だけを挙げて。
スタイルの好みは挙げないで。
「気になる点を全部挙げて」は過剰設計への入り口です。挙げる範囲を絞ります。→ 14章
修正ループを回す
[レビュー結果]を踏まえて修正して。
修正後にもう一度検証して、指摘がなくなるまで繰り返して。
同じ箇所を行き来し始めたら止めて報告して。
止める条件を先に決めておきます。→ 15章

やってはいけない指示
| 避ける | 理由 |
|---|---|
| 「いい感じに」「適切に」 | 終了条件が存在しないので、エージェントが勝手に決める |
| 「このコードベースを改善して」 | 広範なスキャンを誘発し、コンテキストとコストを食う |
| 一度に大きすぎる仕事 | タスクが長くなるほど成功率は崖のように落ちる |
| 失敗したときに指示を足す | 射程外のタスクは説明では救えない。切り直す |
設定ファイル早見表
どのファイルが誰に届くかを間違えると、事故になります。→ 10章
| 置き場所 | 誰に効くか | 何を書くか | Git |
|---|---|---|---|
| 組織の管理設定 | 組織全員 | 禁止ルール、絶対に守らせる方針 | 配布 |
| ユーザー設定(ホーム配下) | 自分・全プロジェクト | 個人の好み、言語設定 | 対象外 |
| プロジェクト共有設定 | チーム全員 | 権限、フック、テレメトリ | コミットする |
| プロジェクト個人設定 | 自分・このプロジェクト | 個人の例外、試行中の設定 | コミットしない |
注意点
- プロジェクト個人設定はプロジェクト共有設定より強い
- 「今後は聞かない」の許可はプロジェクト個人設定に溜まる。チームに要るものは共有設定へ引っ越す
- 個人設定ファイルを手で作った場合は自動でGit除外されない
- 共有設定は起動したフォルダからしか読まれない。リポジトリのルートで起動する
指示ファイルに書くもの・書かないもの
→ 11章
| 書く | 書かない |
|---|---|
| ビルド・テスト・lintのコマンド | コードを読めば分かること(ディレクトリ構成、依存一覧) |
| 触ってほしくないファイル | 一般論(「読みやすいコードを」) |
| ディレクトリの役割、ドメイン用語 | 頻繁に変わる事実(バージョン番号) |
| PRの出し方、コミットの粒度 | 長いアーキテクチャ解説 |
サイズの目安 — 公式が示す目安は200行未満(Cursorのルールは500行以内)。長いと遵守率が下がります。
具体性の目安
| 効きにくい | 効きやすい |
|---|---|
| コードを適切にフォーマットする | インデントはスペース2つを使う |
| 変更をテストする | コミット前に npm test を実行する |
| ファイルを整理して保つ | APIハンドラは src/api/handlers/ に置く |
追記するタイミング — 同じ間違いを2回した/レビューで指摘された/前回と同じ訂正を打った/新しいメンバーにも同じ説明が要る。再説明が起きたら書くという運用にします。
権限とサンドボックス
→ 5章
| 原則 | 内容 |
|---|---|
| 評価順 | 禁止 → 確認 → 許可。最初に一致したものが決まる |
| 設計の向き | 許可を広げるより、禁止を先に固める |
| 緩めてよい条件 | モデルの賢さではなく、環境が隔離されているか |
| 二層構造 | 権限はエージェントの判断に効く。サンドボックスは判断が乗っ取られても効く |
| ネットワーク | 遮断 → 信頼済みのみ → 許可リスト → 全開放。絞ってから足す |
最初に禁止しておくもの
.envなどの認証情報ファイルの読み取り- 本番環境に触れるコマンド
- 履歴を書き換える破壊的なgit操作
- リポジトリ外への書き込み
フックの使いどころ
| やりたいこと | 使うタイミング |
|---|---|
| 整形・lintを必ずかける | ファイル編集の後 |
| 巨大な出力を絞る | ツール実行の前(コマンドを書き換える) |
| 検証が通るまで終わらせない | 停止時 |
| 完了・確認待ちを通知する | 通知イベント/停止時 |
| 操作の記録を残す | ツール実行の前後 |
判断基準 — 指示ファイルはお願い、フックは保証。破られると困ることはフックへ移します。
セッションの運用
- 無関係な作業に移るときはセッションを切る(最も効くコスト対策)
- 圧縮が何度も走ったら、セッションを作り直す合図
- 同じ指摘を2回しても直らないなら、文脈が汚れている。切り直して指示を書き直す
- 調査など出力の多い作業はサブエージェントに逃がす
- モデルは仕事に合わせる。最上位を既定にしない
並列で走らせるときの確認
→ 7章
- worktreeで作業ディレクトリを分けたか
- 作業ディレクトリの外に書き込むものを洗い出したか(ポート・DB・生成ファイル・キャッシュ)
- 各worktreeの初期化(依存インストール、環境変数)は自動化したか
- タスクは互いに独立しているか
- レビューできる量を超えていないか
- 終わったworktreeを片付ける手順はあるか
新しいプロジェクトで始めるときのチェックリスト
上から順に効きます。
- テストとビルドのコマンドを指示ファイルに書く — 自分で検証できるようにする(最優先)
- 触ってほしくないファイル・コマンドを禁止ルールに入れる
- 認証情報を読めなくする
- 整形・lintをフックで自動化する
- 指示ファイルを200行以内に保つ
- ナレッジ本体をツール非依存の場所に置き、ツール固有ファイルは参照だけにする
- 個人設定と共有設定の置き場所を確認する
- 使っていないツール・MCPサーバーを外す
- 完了と確認待ちの通知を設定する
- 使用量の内訳を確認する手段を知っておく

うまくいかないときの切り分け
| 症状 | まず疑うところ | 該当章 |
|---|---|---|
| 指示を守らない | 指示ファイルが読み込まれているか/長すぎないか/矛盾していないか | 11章 |
| 完了と言うが動かない | 検証手段を渡しているか | 14章 |
| 途中から的外れになる | コンテキストが長すぎないか。切り直す | 9章 |
| 大きい作業が毎回失敗する | タスクが射程を超えていないか | 12章 |
| 設定が効かない | スコープ。読み込まれているか、上位で上書きされていないか | 10章 |
| 想定より高い | セッションを切っているか。モデルは適切か | 17章 |
| 並列にしたら壊れた | 作業ディレクトリの外の共有状態 | 7章 |
| レビューが詰まる | 機械のレビューを人間の前に置いているか | 15章 |
おわりに
本書を通して繰り返してきた考え方を、最後にもう一度だけ挙げます。
- エージェントの性能はモデルだけで決まらない。渡すもの、許すもの、検証させるもの——ハーネス側の設計が結果を変えます
- 書くより、機械で強制する。お願いで済ませていいのは、破られても致命的でないことだけです
- 資産をツールに縛りつけない。ナレッジ本体をツールの外に置いておけば、次に良いものが出たときすぐ試せます
- 体感を証拠にしない。測るのは難しいですが、難しいことと、測らなくていいことは違います
この分野は動き続けます。ここに書いた製品名やコマンド名は変わりますが、上の4つと、各章で扱った原則は、しばらく使えるはずです。
参考リンク
- AGENTS.md — 指示ファイルの共通規約
- How Claude remembers your project(Claude Code 公式) — 指示ファイルのサイズと具体性の指針
- Configure permissions(Claude Code 公式) — 権限ルールの評価順と書き方
- Hooks reference(Claude Code 公式) — フックのイベント一覧
- Best practices for Claude Code(公式) — 検証手段の渡し方と失敗パターン