クラウドコンピューティングとは — 共同責任モデルとパブリック・プライベート・ハイブリッド
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「クラウド」という言葉は毎日のように聞きますが、「クラウドコンピューティングとは何か、説明してください」と言われると意外と詰まるものです。
この章では、AZ-900の最初の出題テーマである クラウドコンピューティングの定義 と、試験でも実務でも最重要の 共同責任モデル、そして パブリック・プライベート・ハイブリッド の3つのクラウドモデルを整理します。
学習者クラウドって、要するに「ネット上のどこかにあるサーバーを借りること」だよね?それ以上の説明って必要なのかな。
先生その理解は半分正解です。ただAZ-900では「誰が何に責任を持つのか」「借り方に何種類あるのか」まで問われます。そこがまさにこの章のテーマですよ。
クラウドコンピューティングの定義
クラウドコンピューティングとは、コンピューティングサービス(サーバー、ストレージ、ネットワーク、データベース、ソフトウェアなど)を、インターネット経由で必要なときに必要なだけ利用する仕組み のことです。
昔ながらの方法(オンプレミス)と比べると、違いがはっきりします。
| オンプレミス | クラウド | |
|---|---|---|
| サーバーの調達 | 自社で購入・設置(数週間〜数か月) | 画面操作で数分 |
| 費用 | 初期投資が大きい(資産) | 使った分だけ払う(経費) |
| 容量の変更 | 買い足し・買い替えが必要 | いつでも増減できる |
| 保守 | 自社で対応 | クラウド事業者が対応 |
電気に例えると
クラウドは「電気」に例えるとイメージしやすくなります。
自宅に発電機を置いて電気を作る家庭はほとんどありません。電力会社から 必要な分だけ買って、使った分だけ支払う 方が、安くて確実だからです。
コンピューティングも同じです。自前でサーバーを持つ(発電機を置く)代わりに、Microsoftのような事業者が運営する巨大なデータセンター(発電所)から、必要な計算能力だけを買う——これがクラウドコンピューティングの本質です。

従量課金モデル — CapExからOpExへ
クラウドの料金は 従量課金(consumption-based model) が基本です。使った時間・使った容量に応じて課金され、使わなければ支払いは発生しません。
これは会計の観点では、支出の性質が変わることを意味します。
- CapEx(資本的支出) — サーバー購入のような先行投資。オンプレミスはこちら
- OpEx(運用支出) — 電気代のような月々の経費。クラウドはこちら
先行投資ゼロで始められ、やめたければすぐやめられる ——この財務的な柔軟さが、企業がクラウドに移行する大きな動機になっています。
サーバーレスという考え方
従量課金を極限まで進めたのが サーバーレス です。サーバーを1台単位で借りるのではなく、「コードが実行された回数と時間」だけに課金されます(AzureではAzure Functionsが代表例)。
サーバーが存在しないわけではなく、サーバーの管理をユーザーが一切意識しなくてよい という意味で「サーバーレス」と呼ばれます。
共同責任モデル — 「どこまでがMicrosoftの仕事か」
クラウドを使えば何もかもMicrosoftにお任せ——ではありません。セキュリティと管理の責任は、クラウド事業者と利用者で分担する という考え方が 共同責任モデル(Shared Responsibility Model) です。
学習者クラウドに置いたデータが漏れたら、それはMicrosoftの責任になるの?
答えは「場合による」ではなく、モデルとして明確に決まっています。
| 責任範囲 | オンプレ | IaaS | PaaS | SaaS |
|---|---|---|---|---|
| データとアカウント管理 | 利用者 | 利用者 | 利用者 | 利用者 |
| アプリケーション | 利用者 | 利用者 | 分担 | 事業者 |
| OS・ミドルウェア | 利用者 | 利用者 | 事業者 | 事業者 |
| 物理サーバー・ネットワーク | 利用者 | 事業者 | 事業者 | 事業者 |
| データセンターの建物 | 利用者 | 事業者 | 事業者 | 事業者 |
重要なのは、どのサービス形態でも「データ」「アカウントとアクセス管理」「端末」の責任は常に利用者に残る ことです。パスワードが漏れて不正アクセスされた場合、それはMicrosoftではなく利用者の責任範囲です。
先生「物理的なものほど事業者、データに近いものほど利用者」と覚えると整理しやすいですよ。IaaS・PaaS・SaaSの違いは第4章でじっくり扱うので、ここでは「責任の境界線がサービス形態で動く」ことだけ押さえれば大丈夫です。
3つのクラウドモデル — パブリック・プライベート・ハイブリッド
「クラウドをどこに置くか」によって、クラウドは3つのモデルに分類されます。AZ-900の頻出テーマです。
パブリッククラウド
AzureやAWSのように、クラウド事業者が所有する設備を、複数の利用者が共同で使う モデルです。
- 初期投資が不要で、スケールの上限が事実上ない
- 設備の管理は事業者任せにできる
- 一般的に「クラウド」と言えばこれを指す
プライベートクラウド
特定の組織だけが使う専用のクラウド環境 です。自社データセンターに構築する場合も、事業者に専用環境を用意してもらう場合もあります。
- ハードウェアを自組織で完全にコントロールできる
- 法規制などで「データを社外の共有設備に置けない」場合に選ばれる
- そのぶんコストが高く、拡張にも時間がかかる
ハイブリッドクラウド
パブリックとプライベート(またはオンプレミス)を接続して併用する モデルです。
- 機密データはオンプレミスに残し、Webサーバーはパブリッククラウドに置く、といった使い分けができる
- 既存システムを段階的にクラウド移行する現実的な選択肢
- AzureはハイブリッドをサポートするAzure Arc(第13章)などのサービスを持ち、この分野に強いとされる
ユースケースで選ぶ
試験では「このシナリオにはどのクラウドモデルが適切か」という出題が定番です。
| シナリオ | 適切なモデル |
|---|---|
| スタートアップが初期費用を抑えてサービスを立ち上げたい | パブリック |
| 法規制でデータの物理的な設置場所と設備の完全な管理が必要 | プライベート |
| 繁忙期だけオンプレミスの処理能力をクラウドで補いたい | ハイブリッド |
まとめ
- クラウドコンピューティングとは コンピューティングサービスをインターネット経由で必要な分だけ使う仕組み
- 料金は 従量課金 が基本で、支出は先行投資(CapEx)から経費(OpEx)に変わる
- 共同責任モデル では、データ・アカウント管理の責任は常に利用者に残る
- クラウドモデルは パブリック(共同利用)・プライベート(専用)・ハイブリッド(併用) の3つ
- サーバーレスは「サーバー管理を意識しない」従量課金の極致
次の章では、企業がクラウドを選ぶ理由——高可用性・スケーラビリティ・信頼性 といったクラウドの利点を、用語の定義から丁寧に見ていきます。