ウェブエンジニア問題集
第2章

クラウドコンピューティングとは — 共同責任モデルとパブリック・プライベート・ハイブリッド

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「クラウド」という言葉は毎日のように聞きますが、「クラウドコンピューティングとは何か、説明してください」と言われると意外と詰まるものです。

この章では、AZ-900の最初の出題テーマである クラウドコンピューティングの定義 と、試験でも実務でも最重要の 共同責任モデル、そして パブリック・プライベート・ハイブリッド の3つのクラウドモデルを整理します。

学習者学習者

クラウドって、要するに「ネット上のどこかにあるサーバーを借りること」だよね?それ以上の説明って必要なのかな。

先生先生

その理解は半分正解です。ただAZ-900では「誰が何に責任を持つのか」「借り方に何種類あるのか」まで問われます。そこがまさにこの章のテーマですよ。


クラウドコンピューティングの定義

クラウドコンピューティングとは、コンピューティングサービス(サーバー、ストレージ、ネットワーク、データベース、ソフトウェアなど)を、インターネット経由で必要なときに必要なだけ利用する仕組み のことです。

昔ながらの方法(オンプレミス)と比べると、違いがはっきりします。

オンプレミスクラウド
サーバーの調達自社で購入・設置(数週間〜数か月)画面操作で数分
費用初期投資が大きい(資産)使った分だけ払う(経費)
容量の変更買い足し・買い替えが必要いつでも増減できる
保守自社で対応クラウド事業者が対応

電気に例えると

クラウドは「電気」に例えるとイメージしやすくなります。

自宅に発電機を置いて電気を作る家庭はほとんどありません。電力会社から 必要な分だけ買って、使った分だけ支払う 方が、安くて確実だからです。

コンピューティングも同じです。自前でサーバーを持つ(発電機を置く)代わりに、Microsoftのような事業者が運営する巨大なデータセンター(発電所)から、必要な計算能力だけを買う——これがクラウドコンピューティングの本質です。

ひらめきのイラスト

従量課金モデル — CapExからOpExへ

クラウドの料金は 従量課金(consumption-based model) が基本です。使った時間・使った容量に応じて課金され、使わなければ支払いは発生しません。

これは会計の観点では、支出の性質が変わることを意味します。

  • CapEx(資本的支出) — サーバー購入のような先行投資。オンプレミスはこちら
  • OpEx(運用支出) — 電気代のような月々の経費。クラウドはこちら

先行投資ゼロで始められ、やめたければすぐやめられる ——この財務的な柔軟さが、企業がクラウドに移行する大きな動機になっています。

サーバーレスという考え方

従量課金を極限まで進めたのが サーバーレス です。サーバーを1台単位で借りるのではなく、「コードが実行された回数と時間」だけに課金されます(AzureではAzure Functionsが代表例)。

サーバーが存在しないわけではなく、サーバーの管理をユーザーが一切意識しなくてよい という意味で「サーバーレス」と呼ばれます。


共同責任モデル — 「どこまでがMicrosoftの仕事か」

クラウドを使えば何もかもMicrosoftにお任せ——ではありません。セキュリティと管理の責任は、クラウド事業者と利用者で分担する という考え方が 共同責任モデル(Shared Responsibility Model) です。

学習者学習者

クラウドに置いたデータが漏れたら、それはMicrosoftの責任になるの?

答えは「場合による」ではなく、モデルとして明確に決まっています。

責任範囲オンプレIaaSPaaSSaaS
データとアカウント管理利用者利用者利用者利用者
アプリケーション利用者利用者分担事業者
OS・ミドルウェア利用者利用者事業者事業者
物理サーバー・ネットワーク利用者事業者事業者事業者
データセンターの建物利用者事業者事業者事業者

重要なのは、どのサービス形態でも「データ」「アカウントとアクセス管理」「端末」の責任は常に利用者に残る ことです。パスワードが漏れて不正アクセスされた場合、それはMicrosoftではなく利用者の責任範囲です。

先生先生

「物理的なものほど事業者、データに近いものほど利用者」と覚えると整理しやすいですよ。IaaS・PaaS・SaaSの違いは第4章でじっくり扱うので、ここでは「責任の境界線がサービス形態で動く」ことだけ押さえれば大丈夫です。


3つのクラウドモデル — パブリック・プライベート・ハイブリッド

「クラウドをどこに置くか」によって、クラウドは3つのモデルに分類されます。AZ-900の頻出テーマです。

パブリッククラウド

AzureやAWSのように、クラウド事業者が所有する設備を、複数の利用者が共同で使う モデルです。

  • 初期投資が不要で、スケールの上限が事実上ない
  • 設備の管理は事業者任せにできる
  • 一般的に「クラウド」と言えばこれを指す

プライベートクラウド

特定の組織だけが使う専用のクラウド環境 です。自社データセンターに構築する場合も、事業者に専用環境を用意してもらう場合もあります。

  • ハードウェアを自組織で完全にコントロールできる
  • 法規制などで「データを社外の共有設備に置けない」場合に選ばれる
  • そのぶんコストが高く、拡張にも時間がかかる

ハイブリッドクラウド

パブリックとプライベート(またはオンプレミス)を接続して併用する モデルです。

  • 機密データはオンプレミスに残し、Webサーバーはパブリッククラウドに置く、といった使い分けができる
  • 既存システムを段階的にクラウド移行する現実的な選択肢
  • AzureはハイブリッドをサポートするAzure Arc(第13章)などのサービスを持ち、この分野に強いとされる

ユースケースで選ぶ

試験では「このシナリオにはどのクラウドモデルが適切か」という出題が定番です。

シナリオ適切なモデル
スタートアップが初期費用を抑えてサービスを立ち上げたいパブリック
法規制でデータの物理的な設置場所と設備の完全な管理が必要プライベート
繁忙期だけオンプレミスの処理能力をクラウドで補いたいハイブリッド

まとめ

  • クラウドコンピューティングとは コンピューティングサービスをインターネット経由で必要な分だけ使う仕組み
  • 料金は 従量課金 が基本で、支出は先行投資(CapEx)から経費(OpEx)に変わる
  • 共同責任モデル では、データ・アカウント管理の責任は常に利用者に残る
  • クラウドモデルは パブリック(共同利用)・プライベート(専用)・ハイブリッド(併用) の3つ
  • サーバーレスは「サーバー管理を意識しない」従量課金の極致

次の章では、企業がクラウドを選ぶ理由——高可用性・スケーラビリティ・信頼性 といったクラウドの利点を、用語の定義から丁寧に見ていきます。