ウェブエンジニア問題集
第12章

Azureのガバナンスとコンプライアンス — Azure Policy・リソースロック・Purview

8
この章の目次開く

組織でAzureを使うと、必ずこういう問題が起きます。「誰かが高額なVMを勝手に作った」「本番のデータベースをうっかり消しかけた」「どこにどんな機密データがあるのか誰も把握していない」——。

これらを 人の注意力ではなく、仕組みで防ぐ のがガバナンスです。この章では3つの道具、Azure Policy(ルールの強制)、リソースロック(保護)、Microsoft Purview(データの可視化)を学びます。

学習者学習者

第9章のRBACで「誰が何をできるか」は制御できるんだよね?それでもまだ足りないの?

先生先生

鋭い質問です。RBACは「誰が操作できるか」の制御ですが、権限を持つ人が「何を作るか」までは制御できません。VM作成権限のある人は高額なVMも作れてしまう。そこで「作ってよいものの条件」を決めるのがAzure Policyです。RBACとPolicyは補完関係にあります。


Azure Policy — 組織のルールをリソースに強制する

Azure Policyは、リソースが従うべきルールを定義し、自動で評価・強制するサービス です。

たとえば、こんなルールを作れます。

  • リソースは 日本のリージョンにのみ 作成できる
  • 仮想マシンは 特定のサイズのみ 許可する
  • すべてのリソースに departmentタグを必須 にする
  • ストレージアカウントの パブリックアクセスを禁止 する

ポリシーの働き方

ポリシーは、割り当てたスコープ(管理グループ/サブスクリプション/リソースグループ)配下のリソースに対して2つの働きをします。

  1. 新規作成のブロック — ルール違反のリソースは、そもそも作成できない(デプロイが拒否される)
  2. 既存リソースの評価 — すでにあるリソースも継続的にチェックし、非準拠(Non-compliant) として一覧化する

第5章で学んだ階層がここでも効きます。管理グループにポリシーを割り当てれば、配下の全サブスクリプションに一括で強制 されます。


リソースロック — 「うっかり」を仕組みで防ぐ

慌てる男性のイラスト

RBACで権限を持っている人でも、操作ミス はします。本番DBの削除ボタンを押してしまう事故は、権限管理では防げません。

リソースロック は、リソース・リソースグループ・サブスクリプションに「保護」をかける機能で、2種類あります。

ロックの種類効果
削除ロック (CanNotDelete)読み取り・変更はできるが、削除はできない
読み取り専用ロック (ReadOnly)読み取り以外(変更も削除も)できない

重要な性質が2つあります。

  • RBACの権限より優先される — 所有者ロールを持っていても、ロックがある限り削除できない
  • ロックを外せば操作できる — つまり防いでいるのは悪意ではなく 「うっかり」。削除するには「まずロックを解除する」というワンクッションが入ることに意味がある
学習者学習者

なるほど、スマホの「削除前にもう一度確認」ダイアログの、インフラ版みたいなものか。

先生先生

まさにそれです。試験では「管理者でも誤って削除できないようにしたい → リソースロック」が定番。Azure Policy(作れるものの制限)との役割の違いも整理しておきましょう。Policyは 入口の制御、ロックは 既にあるものの保護 です。


Microsoft Purview — データのガバナンス

3つ目の道具は、リソースではなく データそのもの のガバナンスです。

Microsoft Purviewは、組織中に散らばるデータを検出・分類・可視化する統合データガバナンスサービス です。Azure内だけでなく、オンプレミスや他社クラウド、Microsoft 365のデータも対象にできます。

主な働きは3つです。

  • データの検出とカタログ化 — 組織のどこにどんなデータがあるかを自動でスキャンし、検索可能な「データの地図(データカタログ)」を作る
  • 機密データの分類 — クレジットカード番号やマイナンバーのような機密情報を自動で識別し、ラベル付けする
  • データ系列(リネージ)の可視化 — データがどこから来てどう加工されたかの流れを追跡する

「うちの会社に個人情報はどこにある?」という監査・コンプライアンスの問いに答えるためのサービス、と覚えてください。


3つの道具の使い分け

この章の総まとめとして、「どの問題に、どの道具か」を一枚にします。

防ぎたい・知りたいこと使う道具
ルール違反のリソースを作らせたくないAzure Policy
複数のポリシーをまとめて管理したいイニシアチブ
重要リソースの誤削除・誤変更を防ぎたいリソースロック
組織のどこにどんな(機密)データがあるか把握したいMicrosoft Purview
操作できる人そのものを制限したいRBAC(第9章)

ポータルで試してみよう — リソースロックの効果を体感する

リソースロックは、実際に「削除できない」体験をすると一発で覚えられます。無料で試せます。

  1. 第5章で作ったリソースグループ(例: rg-learn)を開く
  2. 左メニューの 「ロック」 をクリックし、「+ 追加」 を選ぶ
  3. ロック名(例: lock-test)を付け、種類で 「削除」(CanNotDelete)を選んで保存する
  4. その状態でリソースグループの 「リソース グループの削除」 を実行してみる — ロックが原因でエラーになる ことを確認
  5. 「ロック」画面に戻ってロックを削除すれば、通常どおり削除できるようになる

「所有者権限があってもロックが優先される」「削除には『まずロックを外す』というワンクッションが入る」——本文の2つのポイントを、自分の手で確かめられます。


まとめ

  • Azure Policy は「作ってよいものの条件」を強制する。RBAC(誰が操作できるか)と補完関係
  • ポリシーは新規作成をブロックし、既存リソースも 非準拠 として継続評価する。まとめて扱うなら イニシアチブ
  • リソースロック は削除ロックと読み取り専用ロックの2種類で、RBACの権限より優先 される
  • Microsoft Purview はデータの検出・分類・カタログ化を行うデータガバナンスサービス
  • Policyは入口の制御、ロックは既存物の保護、Purviewはデータの可視化——と役割で覚える

次の章では、これらの設定やリソース操作を行うための 管理・デプロイツール(Azure Portal・CLI・ARMテンプレート)を学びます。