ウェブエンジニア問題集
第7章

Azureのネットワークサービス — VNet・VPN Gateway・ExpressRouteをつなげて理解する

9
この章の目次開く

前章で作った仮想マシンは、ネットワークにつながって初めて役に立ちます。この章のテーマは、Azure上に自分専用のネットワークを組み立てる 仮想ネットワーク(VNet) と、それを社内やインターネットと つなぐための手段 です。

ネットワーク用語は抽象的になりがちですが、「Azureの中に自分のオフィスビルを建てて、廊下と専用道路をつなぐ」というイメージで読み進めてください。

学習者学習者

VNet、ピアリング、VPN、ExpressRoute…「つなぐ」系の用語が多すぎて、どれが何をつないでるのか混乱してきた…

先生先生

実は「何と何をつなぐか」で綺麗に整理できます。VNet内の通信はサブネット、VNet同士はピアリング、社内とAzureはVPN GatewayかExpressRoute。この章はその地図を作る章だと思ってください。


仮想ネットワーク (VNet) とサブネット

仮想ネットワーク (Azure Virtual Network / VNet) は、Azure上に作るプライベートなネットワーク空間 です。オンプレミスで言えば、自社ビル内のLANに相当します。

  • VNetにはプライベートIPアドレスの範囲(例: 10.0.0.0/16)を割り当てる
  • VM、App Service(統合時)、データベースなどのリソースをVNetに接続する
  • 同じVNet内のリソースは互いに通信できる

サブネット — VNet内の間仕切り

サブネットは、VNetのアドレス範囲を分割した区画 です。ビルの中をフロアで分けるイメージです。

VNet: 10.0.0.0/16
├── サブネット1: 10.0.1.0/24  ← Webサーバー用
├── サブネット2: 10.0.2.0/24  ← アプリサーバー用
└── サブネット3: 10.0.3.0/24  ← データベース用

役割ごとにサブネットを分けることで、「DBサブネットにはWebサブネットからしかアクセスさせない」といった 区画単位のセキュリティ制御 ができるようになります(制御にはネットワークセキュリティグループを使います。詳細は第10章)。


VNet同士をつなぐ — ピアリング

VNetは既定では互いに独立しています。VNetピアリング を設定すると、2つのVNetをMicrosoftのバックボーンネットワーク経由でプライベートに接続できます。

  • 同一リージョン内の接続も、リージョンをまたぐ接続(グローバルピアリング) も可能
  • 通信はインターネットを経由しない
  • 「システムごとにVNetを分けつつ、必要な通信だけ許可する」構成で使う

社内とAzureをつなぐ — VPN GatewayとExpressRoute

通信するビジネスマンのイラスト

ハイブリッドクラウド(第2章)を実現するには、オンプレミスのネットワークとVNetを接続する必要があります。手段は大きく2つです。

VPN Gateway — 暗号化トンネルでつなぐ

VPN Gatewayは、インターネット上に暗号化されたトンネルを作って接続する 方式です。

  • サイト間 (Site-to-Site) VPN — 社内ネットワーク全体とVNetをつなぐ。ハイブリッド構成の定番
  • ポイント対サイト (Point-to-Site) VPN — 個人のPC 1台からVNetにつなぐ。在宅勤務者向け

インターネットを使うため低コストで始められますが、通信品質はインターネットの混雑に左右されます。

ExpressRoute — 専用線でつなぐ

ExpressRouteは、インターネットを一切経由しない専用接続 です。通信事業者の専用線でオンプレミスとMicrosoftのネットワークを直結します。

  • 帯域と遅延が安定し、大容量通信に向く
  • インターネットに出ないため、セキュリティ要件が厳しい業界(金融など)で選ばれる
  • そのぶんコストは高い

名前解決 — Azure DNS

Azure DNSは、ドメイン名とIPアドレスの対応(DNSレコード)をAzureでホストするサービス です。

www.example.com のようなドメインの問い合わせに、Azureのグローバルなネームサーバー網が応答します。既存のドメインのDNS管理をAzureに移せば、他のAzureリソースと同じポータル・同じ権限管理(RBAC)で運用できるのが利点です。


入口をどこに置くか — パブリックエンドポイントとプライベートエンドポイント

Azureのサービス(ストレージやデータベースなど)への「入口」には2種類あります。

パブリックエンドポイントプライベートエンドポイント
アクセス経路インターネット経由の公開アドレスVNet内のプライベートIP
既定の状態多くのPaaSサービスの既定明示的に構成する
セキュリティファイアウォール等で制限は可能インターネットに入口を公開しない

プライベートエンドポイント を構成すると、たとえばストレージアカウントに 10.0.2.5 のようなVNet内のIPアドレスが与えられ、インターネットを経由せずに アクセスできるようになります。「DBへの接続をインターネットに公開したくない」という要件の答えです。

学習者学習者

なるほど、「つなぐ手段」が要件ごとに分かれてるんだね。表にすると意外とシンプルかも。

先生先生

その調子です。最後に「何と何をつなぐか」の地図を一枚にまとめて、この章を締めましょう。


この章の地図 — 「何と何をつなぐか」一覧

つなぐもの使う仕組みキーワード
VNet内のリソース同士サブネット分割+VNet内通信区画ごとの制御
VNetとVNetVNetピアリングリージョンをまたげる、非インターネット
社内とAzure(低コスト)VPN Gateway暗号化トンネル、インターネット経由
社内とAzure(高品質・非公開)ExpressRoute専用線、インターネット非経由
在宅PCとAzureポイント対サイトVPN個人端末から接続
ドメイン名とIPAzure DNS名前解決のホスティング
PaaSサービスへの非公開の入口プライベートエンドポイントVNet内のプライベートIP

ポータルで試してみよう — VNetとサブネットを作ってみる

仮想ネットワーク自体は無料 です(VPN GatewayやExpressRouteは有料なので作らないこと)。アドレス空間とサブネットの関係を画面で確認しましょう。

  1. ポータル上部の検索ボックスに「仮想ネットワーク」と入力して選択する
  2. 「+ 作成」 をクリックし、リソースグループ(例: rg-learn)と名前(例: vnet-learn)を指定する
  3. 「IPアドレス」タブ を開く — 既定でアドレス空間(例: 10.0.0.0/16)と default サブネットが設定されている
  4. 「+ サブネットの追加」 で、本文の例のように 10.0.1.0/24 のようなサブネットを足してみる
  5. 作成後、VNetの 「サブネット」 画面で区画の一覧を確認。試し終わったらリソースグループごと削除してOK

まとめ

  • VNet はAzure上のプライベートネットワークで、サブネット で区画に分けて役割ごとに管理する
  • VNet同士は ピアリング でつなぐ(リージョンをまたぐグローバルピアリングも可能)
  • 社内との接続は VPN Gateway(暗号化・インターネット経由)ExpressRoute(専用線・非経由) の2択
  • Azure DNS はドメインの名前解決をAzureでホストする
  • プライベートエンドポイント はPaaSサービスへの入口をVNet内に閉じ込め、インターネット非公開にする

次の章では、ネットワークの上を流れるデータの保存先——Azure Storageのストレージ層と冗長性オプション を学びます。